ヴィンテージジーンズに魅了される要因を一つ挙げるとしたら、綿糸が朽ちてゆく自然美じゃないでしょうか。
リーバイス501も、リー101も、年代によってデニム生地が異なって、その生地のオーラがマニアの心をくすぐるのですが、もっとマニアックになると、アーキュエイトステッチやレイジーSステッチの綿糸が切れていく様に『いとをかし』を感じてしまうのです。
ヴィンテージジーンズを穿いた人のバックスタイルを拝見した時、バックポケットの綿糸が朽ちて所々無くなった状態のジーンズだったら、カッコイイな~と見とれてしまいます。
ステッチが綺麗に残っていると、レプリカじゃないの?と疑っちゃいます。ごめんなさい。
綿糸ステッチにも種類があって、イエローから退色して肌色に近くなってゆく糸もあったりします。綿糸だけでも奥が深い!
バックポケットに意匠を凝らす為、他の縫製箇所とは違う糸でデザインした訳ですが、だいたい何で切れる事が想定できる綿糸を使ったのでしょう?まさか、糸が切れたらカッコいいじゃん!なんて考える訳ないですからね。
第二次世界大戦期間中は、物資統制下でペンキステッチを余儀なくされた歴史なども、当時のリーバイストラウス社にとっては黒歴史でしょうし、現代のヴィンテージマニア達が、そんなところに喜んでいる事知ったら、腰を抜かすに違いないです…
新品の時が一番美しい物と、使っていくに従って美しく変化してゆく物と、大別すると二種類の物があると思います。ジーンズのように天然素材で生産された物は後者に属します。加工品と云われる物が前者です。
加工品が発明されるまでは、天然素材で生産せざるを得ない時代ですから、経年変化がどうやらなんて考えていたわけではありませんが… 逆に経年変化が欠点だと考えていた時代だと思います。
今の世の中、加工品に囲まれて暮らす事が多いです。若い人は特にその傾向が強くなっているでしょう。だから朽ちてゆく美とか経年変化美とか理解に苦しむ若者は増えていくはず。ひとまとめに、経年劣化と見なされるかも…
アメカジの神髄は、服でも靴でも、永久不滅の大定番が存在する事。ファッションの中でも、アメカジはニッチな分野かもしれませんが、そんな分野に興味を持ってくれた若者世代に襷を渡すべく、正しく使いこなせば美しく変化してゆく物がある事を語ってゆかねばならない…
朽ちた綿糸を鑑賞してると、ついついそんなことをオヤジは思うのです。
この記事へのコメントはありません。